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タタール国立オペラ劇場

2008年3月13日



モスクワから東方に約800キロのところにあるロシア連邦タタールスタン共和国の首都、カザンに位置するオペラ劇場です。タタールスタン共和国の直接の起源は、13世紀末にロシアに攻め入ったモンゴル系遊牧民族・タタール人。もともとヴォルガ河に臨む交通の要衝ということもあり、カザンは現在ロシア有数の工業都市となっています。

 連邦とは大雑把に言うと独立性の高い地方自治体の集合体なので、カザンはロシアの地方都市でもあると同時に、共和国の首都でもあります。こうした共和国の中でもタタールスタンはトップクラスの経済水準にあるので、一口に「ロシア地方都市の劇場」といっても、このタタール国立オペラは特に財政面で他と違った基盤を持つと言えるでしょう。



 そのタタール国立オペラ劇場の大雑把な略歴をご紹介しますと、創立は1939年なので現在69シーズン目。今の建物になったのは1956年、その翌年に国民的詩人であるムーサ・ジャリリ記念とし、1988年、アカデミーの称号を付与されました。

 近年の目立った功績としては、「ユスフェの物語」(音楽:レオニード・リュボフスキー/振付:ゲオルギー・コフトゥン、ニコライ・ボヤルチコフ)で文化・芸術部門での2005年度ロシア国家賞を受賞、また「くるみ割り人形」でオランダのテレビ局Channel AVRO2が主催する2005年度“ベスト・ステージ・プロダクション”のグランプリを獲得などが挙げられます。

 こうした劇場の躍進は、劇場総裁であるラウファル・ムハメトジャノフ氏によるとことろが大きいとのこと。1981年にそのポストについてから、彼はシャリャーピン記念オペラ・フェスティバル(’82年~)、ルドルフ・ヌレエフ記念クラシック・バレエ・フェスティバル(’87年~)という2大イベントを軌道に載せました。また、ソ連崩壊後はいち早く海外に活路を見出し、近年は年間約150回の本拠地カザンでの公演をこなしながら、年間130回以上の公演を海外で行っています。その海外遠征先は以下の通りです:オランダ、ドイツ、ベルギー、スイス、オーストリア、ポルトガル、スペイン、フランス、ノルウェー、デンマーク。 

 と、これだけ書くとドサ回りのツアーリング・カンパニーかと思われるかもしれませんが、実際は毎年のように同じ都市をまわる恒例行事となっていて、各地との信頼関係も深いそうです。









日本ではほぼ無名のバレエ団なのですが、「カザンにはいい劇場がある」という話はロシアの劇場関係者からはよく耳にします。今回、タタール-日本文化情報センター《SAKURA》ディレクターを務めるアーシヤ・サディコワさんの協力のもと、このタタール国立オペラ劇場をバレエ団を中心に取材することが出来ました。結論からいうと、「日本ではほぼ無名のカンパニーなので、そのレベルの高さにビックリ」です。白状すると、侮ってました…すみません(笑)各リンクからそれぞれ細かいレポートにジャンプできるようになっているので、ここでは簡単に取材の概要をお話します。

3月11日 14:00~ まずはご挨拶、ということで劇場総裁とバレエ団監督に会い、劇場に関する詳しいお話、経営方針などを伺います。総裁の第一印象は「う~ん、やり手だなあ」です。
16:30~ リハーサル見学 丁度13日の「シュラレー」のリハーサルをやっているということで、見学させていただきます。クラシカルな外観とうって変わって、劇場内はとっても近代的、どこのオフィスビルかと思いました。基本6階構造で、リハーサル室は最上階だそうです。エレベーターも大きくてピカピカでした。
17:30~ ビデオ資料閲覧 こういう資料(しかも最新のもの)がパッと出てくるあたりはさすがにプロモーターとの交渉に慣れているなあ、という感じです。この日は「白鳥の湖」「バヤデルカ」「海賊」「ペール・ギュント」「韃靼人の踊り」をそれぞれダイジェストで観せていただきました。







3月12日 10:00~ レッスン見学 朝の全体レッスンを見学させていただきます。場所は昨日のリハーサル室です。同じ大きさのリハーサル室がここの裏にもう一つあるそうです。
11:30~ ビデオ資料閲覧 昨日観きれなかった「コッペリア」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」「ドン・キホーテ」を観せていただきました。





3月13日 17:00~ 「シュラレー」鑑賞 18:00開演のバレエ公演を鑑賞します。この日は満席も満席、関係者用のロイヤル・ボックスも満杯でした。
21:00~ インタビュー 21:00に公演が終わった後、バレエ団監督のウラジーミル・ヤコヴレフ氏に少しお話を伺ったあと、本日主役を踊った二人にインタビューをします。


最後になりますが、情報を出し惜しみせず劇場、バレエ団を案内して下さったウラジーミル・ヤコヴレフバレエ団監督、色々と気を遣って取材をサポートして下さったスタニスラフ・スィラドエフ氏とも、本当にありがとうございました!




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